ヨコタさんの話
新潟市で幼少期を過ごした者ならば、必ず耳にするであろう人の名前。
ヨコタメグミさん。
12年前に北朝鮮で死んだことにされてしまった、拉致被害者の女性だ。
オトウサンのシゲルさんが、きのうお誕生日だったそうだ。80歳を過ぎている。
なんとなく思い出せるのは、古町での署名活動している姿や中学時代に同じ学年で別のクラスの担任がメグミさんと同級生で、街頭で演説をしていたと、だれからともなく聞かされた記憶。
そのメグミさんも今年で50歳と聞いて、自分の長兄と1個しか違わないことにいまごろ気づいた。
夏に毎日新聞の新潟版で、特定失踪者リストに入っている家族にインタビューする記事が連載されていた。
行方不明の家族がいるというのは、どのような思いが去来するものなのだろう。
姉が突如失踪した男性は「やくざの情婦になっているかもしれない」と想像を巡らせていたと語っていた。
生きていれば90歳という失踪者の家族は、生存を諦める気持ちでいた。
「理由がわからない」というのは恐ろしいことだと思う。
想像しても想像しても、答えにたどり着かない。それが10年、20年、30年…延々と続く。
死ぬまでたどり着けない。
新潟市で幼少期を過ごした者なら、きっとみんな一度は思っているはずだ。「メグミさん、帰ってくるといいね」
どうか、どうか。